株式会社フレクトを卒業してfreee株式会社へ転職します

いわゆる退職エントリー(2年9ヶ月ぶり2度目)です.昨年のふりかえりエントリでも軽く触れましたが,2021年2月28日付けで株式会社フレクトを退職しました.2019年1月に入社し,2年2ヶ月と短い間ではありましたが,沢山の仲間にフォローしてもらいながら貴重な経験をさせていただきました.感謝の言葉しかありません.残っていた有給休暇20日分を全て消化し,2月26日に最終出社してデスクとロッカーの整理・書類提出・貸与品返却・簡単ではありましたがメールなどで挨拶をしてきました.

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やったこと

入社直後のトレーニングや,案件なく社内ニートだったり,有給休暇の消化期間もあるので,期間を全部足しても26ヶ月にはなりませんが,在職中はざっくりと以下のプロジェクトに携わりました.

  • 某自動車メーカーのコネクテッドカーリリースに向けたWebやアプリのマイページ機能を拡張するプロジェクトに参加し,基本設計や詳細設計のほか,既存ソースコードやシステムの構造を調査しました.またEoLなどサポート期間が切れていたものは長期サポートのバージョンにあげました.(3ヶ月・エンジニア/アーキテクト)
  • 某結婚相談所のユーザ認証基盤を刷新するプロジェクトの中で,既存ユーザにAWS Cognitoのユーザプールへ移行してもらうための導線や,シングルサインオン(SSO)など,認証に関連する一連の機能を提供しました.(15ヶ月・プロジェクトリーダー/テクニカルリード)
  • 某建機メーカーの巨大なデバイスからの稼働情報を収集して解析する基盤に,機能拡張をしました.(3ヶ月・エンジニア)
  • 某タイヤメーカが顧客に提供する自社ECサイト・モバイルアプリの機能改善プロジェクトの計画提案活動の中で,実現するための技術調査などをしました.(1ヶ月・エンジニア)

良かったところ

プロパーもビジネスパートナーも皆さんとても親切で丁寧に対応をしてくれ,互いを尊重する雰囲気があります.特に印象的なのは時間ができると代表自らがオフィスにいるメンバーにくまなく声をかけてまわっている姿をよく見かけました.最終出社日もお時間作ってくださり,改めて物腰柔らかな対応・積極的にコミュニケーションをとる姿勢を尊敬しています.前職では,俺様に挨拶がないと社長や取締役がキレて,急遽オフィスビルのエントランスでマネージャ陣がならばされ挨拶運動をするとかまであったので,お偉いさんは文字通りエラそうにしているものだと思っていました.

前職のような老害・イキった上司・勘違いした同僚といった困ったちゃんがほとんどいません.極々一部にマウントとろうとする人もいるようですが,在籍中に接点もなく私は平和に過ごせました.フレクトは,傾聴の姿勢がある方が多く,技術好きな方も結構集まっていたり,技術に理解がある方が結構いらしたので,比較的働きやすい環境でした.

そのほかに,学ぶ姿勢を大事にするフレクトの考え方に共感していました.ベンダー認定資格取得の報奨金制度やキャンペーンはもう少し活用したかった.毎月1万円までの書籍購入支援で,気兼ねなく技術書を買えました.積読もまだ残っていますけど… 

1年ほど前に新型コロナウィルス感染者が増え始めて,すぐに全社リモートワークに切替え,メンバーを守るという姿勢を出してくれたのもありがたかった.社内勉強会,Family Day,BBQ大会,LT大会などの社内イベントも多く開催され,コミュニケーションを大切にしているのだなとも感じました.前職元同僚のエンジニアを中心に何人かにもフレクトを紹介しましたし,実際にリファラル採用枠で転職した人もいるくらいに良い職場です.

なぜ退職するのか

より難易度が高かったり,新しい技術を使ったりしてエンジニアとしてのスキルアップや組織としての底上げに繋げたかった.私が所属していたのはいわゆるシステムインテグレーションであり,クライアントワークの中での提案や技術的負債の返済の難しさに悩みました.お客様の意向をゼロから実現するのであれば,新しい技術やモダンなワークフローを取り入れるなどしながら,自分自身もチームもスキルアップできたりしたでしょう.実際には,技術的負債が多くある既存コードに対して機能追加や拡張をする案件で,前述に苦しめられ,思惑の通りに進められませんでした.私個人としては技術的負債の返済やリファクタリングフルスクラッチ開発・パフォーマンス改善などは難易度の高いエンジニアリングだと考えているので,何かしら取り組めればまた違ったのかもしれません.ただ,お客様も現場の一部も技術的負債の返済に対しては無関心・消極的でした.

新しい技術を使うことにはやや消極的な部分もありました.納期やお客様の意向もあるので堅実に進めることが多いです.最近は他のプロジェクトでフルスクラッチする時の設計の相談を受けることもありましたが,技術選択や設計が微妙なモノもあり,後々の機能拡張や保守運用で苦労するだろうなと思うこともありました.ただ首突っ込んで意見を言えるタイミングではなかったりと… 

入社当初から開発ツールやSaaSの新規導入については保守的でした.「費用対効果の観点で開発効率や導入の効果を定量的に示せ」というだけなら簡単ですが,経営会議で議論する人件費や,何も導入しないままの空走期間,導入しないことの損失*1についても目を向けて欲しかったですね.せめて月額利用料などに応じての柔軟な対応*2があればとは思いました.ツールは文字通り道具ですし,新しい技術は手段の1つです.これらは日頃から使い込んでいるからこそ,手に馴染み,より良いパフォーマンスに繋がるのだと考えていました.(古いのでしょうかね…) ただ今年に入ってからエンジニアリングチームの立ち上げを画策したりと本腰をあげて取り組むようになったようなので,近いうちに改善されることでしょう.

 

自分自身もユーザとして利用しているようなサービス開発の案件に携わりたかった.最も長く担当した案件は某結婚相談所でした.自分自身も使うことないですし,国内最大手ではありましたが周囲にも会員はいませんでした.その後の某建機メーカーの案件にしても,私自身の生活との接点があまり見出せませんでした.結局のところ最後までユーザ目線に立ち,クライアントに寄り添って支援する(プロジェクトを進める)楽しさのようなものを味わえませんでした.社内の他のプロジェクトを見ても,普段自分が使うようなサービスに関連したものは直近ではなかったかと.最初に担当した某自動車メーカーのサービスはプライベートで使っていたのですが,残念なことに案件がロストしてしまいました.もし続けていられたら自分でも使っているプロダクトの開発を支援することで,後述のやりたいことを実現できたのかもしれません.

 

また今後エンジニアとしてのキャリアアップを考えたときに,キャリアパスをイメージできませんでした.端的にいえば社内に目指すロールモデルがいませんでした.いい年齢なのだから自分の希望するポジションを作るという選択もあったのかもしれません.そのためには外部から自分のやりたい仕事をとってくるのでしょうが,提案活動と開発は分業体制なため,そのために開発から離れてしまいます.また在職中はチーム管理の割合が多く,たまにプログラミングをすると以前のようなスピードでコードを書けない自分がいて,継続的に手を動かす必要があると感じました.

 

上記3点でモヤモヤしていたことに加えて,給与レンジの上限にいて2年間昇給無く,昇格も無かったので,エンジニアとしての客観的な市場価値を知りたくなりました.

転職活動

コロナ禍ではありますが2020年春頃から企業や転職エージェントに声をかけてくださいました.2020年9月上旬に担当しているプロジェクトのデリバリが終わり,心身ともに余裕ができてから多くの方とリモートでカジュアル面談や会話をしました.2年ちょっと前のフリーランス時代の求職活動の時は,スーツ着用で発注元企業のオフィスを早朝出勤・早退して都内のオフィスまで移動していました.昨今のコロナ禍ではほぼほぼリモートで面談・面接だったため,移動コストゼロで進められました.2020年10月頃から某転職エージェントを中心にご支援いただき,最終的には3社の企業から最終面接を通過しオファーをいただける状態になりました.

A社はBIG4に次ぐいわゆる大手の外資系ITコンサルティングファームでした.大きな仕事を成し遂げられるのではという点と,年収アップが期待できそうですが,面接したシニアマネージャが若くして昇進しているオラオラ系で,私の一番苦手なタイプ*3だったのと,プロジェクト管理を強く求められているようなので,オファーレターをもらう前に辞退しました.

医療系ITベンチャーのM社*4の子会社で,新しい事業企画の0→1の開発フェーズや開発組織の立ち上げに携われそうなリードポジションと魅力的でしたし,面接してくださった方との技術思考も非常に相性良さそうでした.しかし最終面接が終わった後に事業計画見直しとかで親会社での採用として最終面接のおかわりをしました.親会社での開発業務は今のところCOBOLからRubyへの書き換えがメインということなので辞退しました.

最終的には今の自分にもっともフィットしそうなfreee株式会社にしました.Ruby on Railsの経験はないので,有給休暇の消化期間中に書籍などで完全に理解したと言えるまでにはなります.

転職市況

今回の転職活動で感じたのは,48歳のオッサンでも割とニーズがあることに驚きました.ただし,いずれの企業も面接の回数が多い傾向にありました.少なくとも3回で,多いところでは5回以上というところもありました.ミスマッチを防ぐために慎重に採用活動をしている印象でした.

転職活動終盤でのしくじり

過去のツイートやブログエントリにも書きましたが,フレクト社内の部門Zoomの最中に最終面接の予定を私物MacBook Proが読み上げてしまう事故を起こしてしまいました.下図のように私物MacBook Proで通知を読み上げる機能を有効にしていたのが原因でした.そのときに進行役の上司は「誰かのAlexaが何か言っている?」くらいでしたが,転職するかもと伝えていた極一部の社内メンバーから「いま放送事故があったw」とDMが来て,あーやらかしてしまったと.ここで完全にテンパってしまいました.前日にfreee社からオファーレターをもらっていて気が緩んでいたのでしょうか.Zoom終わってM社のおかわり最終面接を終えた後に,フレクトのオフィスに出社して部長に退職の意思を伝えました.あとで放送事故を起こしたZoomの参加者何人かに訊いても内容までは聞き取れていなかったようでしたが,ミュート機能大事だなと痛感しました.オファーレターをもらっていたのは不幸中の幸いと言えるでしょう.もし活動序盤だとしたらと思うとゾッとします.

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まとめ

フレクト在職中はメンバーやお客様以外にAWS・Auth0・CircleCI・Stripe・NewRelic・datadog・Autifyと言ったパートナー企業の方々との接点も作れました.また業務ではAWSの様々な製品を使う機会があり,クラウドSaaSについて知識の整理と深掘りをできました.私個人として納得できる品質でデリバリができなかったのは忸怩たる思いです.今風にいうと「柱を守れなかった」といったところでしょうか.ただ退職のことを知ったメンバーから「辞めるのは残念」「一緒に仕事できてよかった・やりたかった」「いつでも戻ってきていいよ」「freeeは社内でも使い始めたよ(個人でも使っているよ)」などの暖かい声とともに送り出してくださり,感謝の気持ちでいっぱいです.この場でもお礼申し上げます.本当に本当にお世話になりました.同じような業界なので今後も何らかの絡みはあるかと思います.所属は変わりますが引き続きよろしくお願いします.Zoom飲み会などあれば是非ともお声がけください.なお2020年6月から社内で毎週開催している輪読会は,所属の垣根を超えて続けてゆきます.

転職活動をする中で,自分の強み・経験してきたことを言語化し,いろいろな企業に対して伝えることで,自分のやりたいこと(自分もエンドユーザとして使っているようなサービスの開発をやりたい)を再確認できました.また転職するしないは別として,エンジニアとして通用するのか,市場価値があるのか否かを客観的に評価してもらうのも,重要ではないかと感じました.

freeeは,私自身がフリーランスをやっているときに個人事業主の開業と青色申告(確定申告)でユーザとして課金して使っているサービスでもあり,今回はそのサービスの開発・提供に携われる(中の人になれる),非常に良い機会をいただけました.これまでの経験をフル活用し,悔しい思いも糧にして,新しいことも学び,挑戦して,何らかの爪痕を残したいと思います.

 

*1:モチベーション低下による離職や,エンジニア採用できないなど,デメリットにしかならない

*2:数千円までなら部長承認でOKとか.

*3:前職(フレクトの前)で最後の部署にいた,技術のことも分かっているつもりだが全く分かっていないオラオラ系上司ほどではないかったが,お友達になりたくない点は共通.

*4:つい最近に代表取締役の不倫報道などあったあの会社です.